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田路研究室ホーム研究内容半導体光触媒
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◎ 古くて新しい光触媒素材

 1970年代、本田・藤嶋効果として知られる酸化チタン光触媒を用いた水の光分解が示されて以来、太陽光により水を分解して水素をつくりだすという夢の実現に向けた研究が行われてきました。しかし、酸化チタンは紫外光しか利用できないため、太陽光による水の光分解に使った場合、効率が極めて低く現実的とはいえません。硫化カドミウム(CdS)などの金属硫化物は、光触媒としての活性や効率が高い半導体素材として古くから知られていました。ただし、これらに水中で光を当てると自らを酸化し溶解してしまいます(光溶解)。これを抑制するために硫化物イオン, S2-、硫化水素イオン, SH-や亜硫酸イオン, SO32-などの犠牲還元剤と呼ばれる化学種を必要とすることが最大の欠点といわれてきました。

 しかし、自然活動・人間の活動により発生し、悪臭ガス・腐食性ガス・毒性ガスとして排出される硫化水素, H2Sの処理という観点で反応系全体を眺めると、光溶解を防ぐための添加剤ではなく、光触媒により処理される反応物ととらえることができ、環境保全に貢献する有力なプロセスとなります。
 この古い光触媒素材を独自の調製プロセスで強力に効率アップし、新しいエネルギー創造・環境保全の担い手として利用しようとしています。

光触媒素材としてのZnS、CdS

 硫化亜鉛(ZnS)や硫化カドミウム(CdS)は半導体の性質を示す結晶固体として知られています。ZnSのバンドギャップのエネルギーは約3.6eV(電子ボルト)で、およそ340nm以下の短い波長をもつ紫外線を照射したときに価電子帯の電子が伝導帯に励起されます。CdSの場合はバンドギャップ約2.4eV、光の波長にして約510nm以下で電子を励起します。


太陽光における波長と光子数の関係

 地表に届く太陽光においては、紫外光・可視光を含めた光子の個数は被照射面積1平方メートル、1秒あたり約1.7×1021個です。

 太陽光による水素発生能力という視点からみると、光触媒に求められる性質は「より広い波長範囲の光を利用するためにバンドギャップが小さい」「太陽光で励起した電子のうち、水素生成に利用される割合が高くなるような構造を持っている」ことです。

 利用できる光の波長を広げるためには、バンドギャップの小さいCdSが有利です。しかし、励起電子の利用効率(量子効率)の点で見るとZnSのほうが優れています。ZnS並みの効率でCdSのような波長範囲が利用可能であれば、さらに大きな水素生成量が期待できます。

ストラティファイド微粒子光触媒
Stratified ZnS
ストラティファイドZnS

 田路研究室では、新しい溶液反応プロセスを開発し、これを用いて調製した硫化亜鉛(ZnS)微粒子が、硫化水素を溶かしたアルカリ水溶液中で光触媒としてはたらき、非常に高い効率で安定に水素を発生することを見出しました。この素材は、数nm(ナノメートル)という極めて小さな結晶粒子が大きさ数10〜100nmの殻(カプセル)を形成してできています。このような殻状の構造を私たちは「ストラティファイド構造」と名付けました。ストラティファイド構造とその詳細についてはこちらをご参照ください。

 さらにこのストラティファイド微粒子調製プロセスを硫化カドミウム(CdS)へ応用することに成功しました。CdSのバンドギャップのエネルギーは約2.4eV(電子ボルト)で、510nm以下の波長をもつ紫外光と可視光の一部を利用可能です。太陽光を利用した場合、効率100%でエネルギー変換可能とすると、1平方メートルあたり1時間に30リットルまでの水素を得ることができます。現在、1時間あたり約6〜7リットル生成可能な光触媒が得られています。

Stratified CdS Stratified CdS
ストラティファイドCdS
高効率光触媒の薄膜化への試み
CdS-film
ガラス基板上のCdS光触媒薄膜

 半導体光触媒を水素製造の手段として実用化させるという観点から考えると、薄膜形態にすることが非常に有効かつ重要と考えられます。現在、条件を精密に制御することによって水溶液から固体基板上に選択的に析出させることのできるCBD(chemical bath deposition)法を適用して、薄膜状半導体光触媒の開発研究を行っています。

CdS-MWNT
カーボンナノチューブ上に析出させたCdS

 この手法は、析出させる基板の種類を幅広く選択できます。カーボンナノチューブの表面に半導体のナノ微粒子を析出させることにも成功しました。カーボンナノチューブは高い電子伝導性をもっており、またそれ自身が金属的あるいは半導体的性質をもっています。したがって、化合物半導体とカーボンナノチューブの組み合わせによって光触媒の特性を向上させるようなバンド構造の変化が期待できます。

実用化に向けて

半導体光触媒による水素製造を実用化させるために、田路研究室では

1. ストラティファイド半導体微粒子光触媒の構造評価と水素発生メカニズムの解明
2. 半導体光触媒の薄膜化
3. 利用できる光の波長を可視光に拡大するための改質

をテーマとして研究を進めています。

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Tohji Lab. / Graduate School of Environmental Studies, Tohoku University

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