低炭素社会をもたらす単層カーボンナノチューブを利用した平面発光デバイスの開発

研究目的の概要と計画

東日本大震災は、エネルギーとその在り方に大きな課題を投げかけた。10年後、20年後を見据え、必要電力を確保しつつ地球温暖化対策の両方を満足させる科学技術の新展開が必要不可欠である。
その解決策として、使用エネルギー絶対量を下げるための先導的省エネルギー技術とエネルギーの無駄をなくす再生可能エネルギーを基本とするエネルギーシステム管理システムの構築が必要である。
本研究課題では、前者に注目し、
・LED照明より1/2のエネルギー消費
・低価格化
・希少金属を利用しない
・環境にも配慮する
上記点を満足するために、高結晶性単層カーボンナノチューブ(図1)を用いたフィールドエミッシ型平面発光照明と新たな電子注入源として利用できる電子デバイスの開発を行い、先導的低炭素化技術の確立を最終目的として研究を行う。

  • 図1 高結晶性単層カーボンナノチューブの透過電子顕微鏡像

完全結晶性単層カーボンナノチューブをバルク量での合成できるようになった現在、これまでにない電気伝導性、キャリヤー輸送能力などを生かした電子デバイス素材として利用し、様々なエネルギーデバイスへの応用が推進できると考えた。
その先駆けとして、東日本大震災後の電力状況を緩和するための、我々の生活に不可欠な照明デバイスへの応用を考え、完全結晶性カーボンナノチューブを使用することで、フィールドエミッションによる電子の発生効率をLEDに匹敵するレベルまで向上できた。
今後は、デバイスの安定駆動やデバイスサイズの拡大など、必要な基礎開発を推進し新たなデバイス開発を行う。

  • 図2 高結晶性単層カーボンナノチューブを用いた平面発光デバイスによる発光の様子

脱フッ素化を経由した窒素骨格置換型単層カーボンナノチューブの合成と物性評価

単層カーボンナノチューブ(single-walled carbon nanotube: SWCNT)は1次元物質に発現する特有な電子状態密度を持ち、大気中ではp型(正孔)キャリヤを持つことが知られています。本研究はフッ素化SWCNTsとアンモニアガスを反応させて(下図参照)、大気中で安定なn型(電子)キャリヤを持つ骨格窒素置換型SWCNTsの合成に成功しました。

Koji Yokoyama, Yoshinori Sato, Kazutaka Hirano, Hiromichi Ohta, Kenichi Motomiya, Kazuyuki Tohji, *Yoshinori Sato, “Defluorination-assisted nanotube-substitution reaction with ammonia gas for synthesis of nitrogen-doped single-walled carbon nanotubes”, Carbon 2015, 94, 1052-1060. DOI: 10.1016/j.carbon.2015.07.090